AOYAMAHÜTTE

There is a small "hütte" in the top of a quiet Aoyama building. In a peaceful place where you may make a picnic, why don't you choose the only good for yourself like deciding on the sandwich?

3-18-5 Minamiaoyama sakura apartment 4F
Minato,Tokyo,Japan
  • Love yourself first Part2

     

     

    くつ下を脱いで、様々な刺繍のほどこされた分厚く重たい布団をかぶって、目をとじました。

    しばらく眠れずに、昼間見たちょうちょうたちのことを思い出していました。

    日の光を反射してひかる、フラッシュをたいているような。

    あかるくてあかるくって、その光は少し目につらいのでした。

    まぶたの内側に、シャリン、カラン、パリン、シャラン と、

    音をたててそのちょうちょうたちが飛んでゆくのが見えました。

    わたしは、(おいで)といって、

    手のひらをさしだしました。

    ちょうちょうは、

    へランヘランと羽ばたきながらやってきて、

    ゆっくりと羽をとじたり、ひらいたりして、それから、

    ふぅ~~~、と、うっとりするような長くて細いため息をあのストローみたいな口からはきました。

     

    まばゆくひかる彼女たちに、わたしもうっとりとため息をつきました。

     

    息を大きくすって、まぶたを開けると、くら闇の中、他にもなにかが

    シャリン、カラン、パリン、シャランと音たてて部屋から外へ、外から部屋へと

    いれかわりたちかわりうごめいていました。

    それは、この小さな山に住む生きものたちでした。

    彼らもまた、月明かりに反射してチカンチカンとかがやいていました。

    なんだかすっかり目がさめてしまって、布団をぬけだして、少し夜空の下を歩くことにしました。

    外へ出ると、鼻からも、口からも、わたしのしろい息が雲のように出現しては、はかなくきえてゆきました。

    お腹がすいてきて、ポケットから携帯食に持ってきていたフォーチューンクッキーをとりだしてかじりました。

    その中の紙には、love yourself firstと書かれていました。

    月あかりを浴びて、星と一緒にまたたいて、銀の泉を眺めて。

    いとおしいこの不思議な夜のことを、いつまでも覚えていようって決めました。

     

     

     

    2021 May / “love yourself first” / Karin Okamoto

     

     

     

     

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