くつ下を脱いで、様々な刺繍のほどこされた分厚く重たい布団をかぶって、目をとじました。
しばらく眠れずに、昼間見たちょうちょうたちのことを思い出していました。
日の光を反射してひかる、フラッシュをたいているような。
あかるくてあかるくって、その光は少し目につらいのでした。
まぶたの内側に、シャリン、カラン、パリン、シャラン と、
音をたててそのちょうちょうたちが飛んでゆくのが見えました。
わたしは、(おいで)といって、
手のひらをさしだしました。
ちょうちょうは、
へランヘランと羽ばたきながらやってきて、
ゆっくりと羽をとじたり、ひらいたりして、それから、
ふぅ~~~、と、うっとりするような長くて細いため息をあのストローみたいな口からはきました。
まばゆくひかる彼女たちに、わたしもうっとりとため息をつきました。
息を大きくすって、まぶたを開けると、くら闇の中、他にもなにかが
シャリン、カラン、パリン、シャランと音たてて部屋から外へ、外から部屋へと
いれかわりたちかわりうごめいていました。
それは、この小さな山に住む生きものたちでした。
彼らもまた、月明かりに反射してチカンチカンとかがやいていました。
なんだかすっかり目がさめてしまって、布団をぬけだして、少し夜空の下を歩くことにしました。
外へ出ると、鼻からも、口からも、わたしのしろい息が雲のように出現しては、はかなくきえてゆきました。
お腹がすいてきて、ポケットから携帯食に持ってきていたフォーチューンクッキーをとりだしてかじりました。
その中の紙には、love yourself firstと書かれていました。
月あかりを浴びて、星と一緒にまたたいて、銀の泉を眺めて。
いとおしいこの不思議な夜のことを、いつまでも覚えていようって決めました。
2021 May / “love yourself first” / Karin Okamoto
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