Love yourself first
しろいそらの向こうから、色とりどりの鳥の大群がやってきました。
それはひかりに照らされた埃が落ちてはのぼってゆくような、
そんなゆっくり、ゆっくりとしたうごきでした。
しばらく眺めていると、
鳥と思っていたのは、じつは鳥ではありませんでした。
それは文字のひとかけらだったり、
花のようなもの、草のようなもの、花瓶だったり、ちいさな馬だったり、星くずだったり、
とにかくいろんなものが、ピーチクパーチクかぜにのってきたのでした。
ひととき、それらで空がごちゃごちゃとグレーの雲がかかったように暗くなり
その雲からスポンと、頭になないろのアーチを光らせた女の人がとび出てきて、アヤメの花をポトンと落としてゆきました。
なまぬるい空気と一緒に、なんだかなつかしい香りが鼻をくすぐりました。
それはどこかでかいだことのある香り、ああ、あの、ちいさな山で出会った香りでした。
思わず、急いで空の小瓶をとりだしフタを開けると、
香りは自分からくるくると回転しながら中へはいってゆき、
めをとじて、ふう~~~と、うっとりするような長いため息をつきました。
(きっと長旅で、疲れていたのでしょうね。)
鼻をそっと近づけてみると、
あのちいさな山の霧につつまれたときに感じた
樹木の皮、花の蜜、さまざまな葉っぱ、カラフルな土、うつくしい山の景色や日の光、色彩たちがそこに広がりました。
そうしていると、小屋からみた夜の星をおもい出しました。
ここの星たちは、夜中に山で鳴く虫たちと一緒に光を強めたり弱めたりしながら、
またたいて、音楽をして、ダンスをしてたのです。
このことで、星たちには耳があり、話し声や歌声をいつも聞いているってことがわかってしまいました。
だってぴったり合っていたんです、虫たちのエレクトロニカと。
この世界の、秘密のひとつですね。内緒ですよ。
月あかりや、星ぼしに、きらきらとする銀色の泉。彼らもまた、たいそう美しくまたたいていました。
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